ピアノの寿命
お客様からよく聞かれる質問シリーズ『ピアノの寿命はどれくらいですか?』
こんにちは!Rumah Musica(ルマムジカ)です。
お客さまから非常に良く聞かれる質問シリーズです。
「ピアノの寿命はどれくらいですか?」「家に使っていないピアノがあるけれど、まだ使えるでしょうか?」
について考えてみたいと思います!
かつての売り文句『ピアノは孫の代まで引き継げる財産です』
ピアノが製造された後にも大きな戦争があり、音楽を楽しめる生活が手に入ったのは高度経済成長期を迎え、生活に必要な品々が揃ってから。
ピアノを買うということは音楽を楽しむ生活を手に入れる事であったと同時に、夢を買うことであり、ステータスを手に入れること。
だからピアノを売る人は、かつて「お孫さんの代まで使えますよ♪」なんてロマンチックな事まで言ってお客様に販売していたようです。
勿論良い環境に置かれて、適切なメンテナンスを受けていれば夢ではないと思いますが…実は私はちょっと懐疑的です。
だって、ピアノはとっても丈夫な見た目に見えるけど、置かれた環境によって音色も弾き心地もすごく変わります。
ということは、過酷な環境に置かれたピアノは、すぐに壊れてしまう事もなくはないかも知れません。
そして、一度壊れてしまったピアノを修復をするには手を入れる人の腕の良さ、パーツがすぐ手に入るか、お金が工面出来るかなど、色んな要素がぴったり揃わないとなかなか出来ないことでもあります。
ピアノの寿命を左右する物
私が技術者の人やお客様とお話をしていて考えた、ピアノの寿命を左右する要素を幾つか書き出してみます。(他にもあるかも知れません)
丁寧にきちんと作られたピアノか
見た目が丈夫そうに見えるピアノでも、メーカーによっては丈夫でない素材で作られていたり、作りが大雑把だったりする物もあります。同じメーカーでも、フラッグシップと呼ばれる機種では使っていない素材で工夫して作られたモデルもあります。
そのようなピアノは、大切に扱われたとしてもきちんとした作りのピアノほどは長持ちしないかも知れません。
置かれた環境はピアノに適しているか
ピアノを置くために理想的な環境は、直射日光やエアコンの風が直接当たらない、温度や湿度がなるべく一定に保たれたお部屋です。諸説ありますが、20℃±4℃、50%±5%の範囲に収まることが望ましいとされるようです。また、設置する際は技術者に作業をしてもらい易いよう、ピアノ周りにゆったりとスペースがある事も望ましいです。音を綺麗に響かせるという意味でも、狭すぎるスペースにはめ込んだりしてしまうと音の反射が近過ぎて耳が痛い、と言った事も起きるようです。
適度に使用されているか
ハンマーやブッシングといったフェルト類は使用頻度が高いにつれ摩耗が激しくなりますが、適度な使用があればこそ定期的にメンテナンスをやる気も起きますし、使用される方がご自身で不具合の発生にも気が付きやすくなります。
定期的に技術者によるメンテナンスがされているか
定期的なメンテナンスが施されていないと、良い状態を保つことは難しくなります。メンテナンスがされないと、
・ピアノ内部に埃が溜まる=湿気をため込んでしまう→サビや弾き心地不良の原因に
・ピアノ内部に虫が侵入し、フェルトを食べてしまう→パーツ欠損
・ピアノ内部にネズミが侵入し、木部を齧ってしまう→パーツ欠損
・故障に気がつくのが遅れる→修理の機会の損失
・良い音に保たれにくい。状態が大きく崩れたピアノを良い状態にするには、時間もお金もたくさんかかる→時間と機会、やる気の損失
調律師が行う作業は、音律を整えるいわゆる「調律」の他にもたくさんあります。
・ピアノ内部の掃除
・部品を固定するネジの締め直し(増し締め、と言います)
・弾き心地の調整
・音色の調整(調律とはまた違う作業です)
大体2時間程で、上記の作業のどれを主に必要か判断しながら行っています。また、この作業時間内で収まらない状態になって来たりすると、適切な修理の提案をしたりもします。
ピアノと人間って意外と近いのかも
今までお話しして来たことを考えると、ピアノの寿命も人間と同じように
・適度に体を動かす(楽しく演奏する)
・適切なメンテナンスを施す(定期的に調律や修理を行う)
・良い環境で過ごしてもらう(適切な保管場所に設置する)
という出来る限りの事をしながら100年を目指す、というのが現状に一番近いように思います。
最近のピアノの出荷台数はピーク時の1/30以下にもなっているという話もあります。その状況を打破しようと各メーカーで出している、いわゆる工夫を凝らしてお求めやすさを追求してくれた廉価版もありますので、一概に「あのメーカーだからとにかく丈夫!」みたいなことは言えなくなっても来ているかなと思います。
これからピアノを買われる人は、店員さんや調律師さんなど、詳しい方のアドバイスを聞いて、丈夫で弾きやすく、音の綺麗な最高のパートナーを見つけて欲しいと思います!
皆さん素敵なピアノライフを!